- 2022/06/21
- 田村明孝の辛口コラム
介護保険事業計画
市区町村は3年を1期として、住民のニーズ調査を行って介護保険サービスが要支援・要介護者に対してどのサービスがどれくらい必要か、居宅サービス・施設サービス・地域密着型サービスの見込み量を算定する。その見込み量に基づいて市区町村ごとに65歳以上の介護保険料が決定される。
都道府県では、市区町村の介護保険事業計画の見込み量を、医療圏域毎に統合し調整したのち介護保険サービス整備量として介護保険事業支援計画を定める。
介護保険事業計画は、要介護者が必要とする介護サービスを必要な量だけ提供できるよう作られた3か年計画だ。
介護保険計画の実施状況
弊社では、第3期から、都道府県介護保険事業支援計画の施設サービス整備量を集計している。また毎期終了後、実際どれだけ整備されたか予実対比をしてきた。
施設サービスとは特養・老健・療養病床の介護保険3施設と介護付有料など特定施設とグループホームなど施設・居住系への入所・入居して受けられる介護サービスを指す。
次の表は施設・居住系の毎期の整備計画値と実際整備された実績値を表している。
第3期整備量は約19万戸(床)第4期約21万戸(床)第5期約20万戸(床)。
第4期はリーマンショックによる景気拡大策として、特養が約2万床上乗せした数値を考慮すると、第3期から第5期はおおむね20万戸(床)の計画となっている。年々要介護認定者数は増加しているにも拘らず計画整備量はほぼ横ばいで推移している。
しかも第6期は約16万戸(床)第7期約12万戸(床)今期第8期10万戸(床)と毎期整備計画量は減少している。
整備計画量に対して、整備実績値は第3期から第6期にわたり毎期約5万戸(床)が未整備状態で、第7期も約2万戸(床)が未整備となっている。
これは、計画段階で計画量そのものを意図的に低く抑えているもかかわらず、介護保険施設サービスが必要と見込まれた要介護者に対して、特養などの整備ができず入所できていないということになる。
入所の行き場を失った要介護者は建設費の高騰・用地確保難・事業者の開設意欲の減衰・介護職員不足などなど、自治体からの言い訳は様々だが、計画整備量達成は自治体にとって必須事業であるはずだ。介護事業者へ自治体から細かな情報提供を行い、事業者誘致を積極的に行う努力が足りていない。
行き場を失った要介護者が毎期5万人発生している。これら要介護者は、在宅で限度額を超えた分の経済的負担をしたり、家族に過剰な介護負担を強いたり、介護を受けずに劣悪な環境で我慢するなど、やむなく在宅でしのいでいる。
しかも高齢者からは、入所する前提で介護保険料を徴収しており、そのヤラズブッタクリぶりは、行政の不作為ともとれ、怠慢としか言えない。
自治体は介護保険事業計画の施行に責任をもって臨み、介護難民が出ないようしなければならない。