第16回 田村明孝の辛口コラム~緩和ケア(ホスピス)ホームの急増の背景

高齢者住宅・施設の2019年から5年間で、類型毎の供給がどれだけ増えたか見てみよう。住宅型有料7万4千戸(直近1年間4千戸)・介護付有料2万5千戸(同1千戸)・サ付き4万2千戸(同2千戸)・グループホーム1万6千戸(同1千戸)・特養3万4千床(同6千床)・老健マイナス6千床(同マイナス1.7千床)となり、サ付きの供給をしのぎ、住宅型有料が際立って多い。
国交省の整備費補助が制度化されているサ付きより、補助金のない住宅型有料がなぜ増え続けているのか、不思議に感じる方も多いだろう。

住宅型有料の開設数が多い理由は以下のことが考えられる。
まずサ付きと比べると、居室面積の狭さがあげられる。有料13㎡に対してサ付きは25㎡(共用スペースがあれば18㎡)で、有料は狭い居室面積で計画すれば開発コストが安く済む。
また同じ有料でも特定施設である介護付は、総量規制の対象で開設に自治体からのブレーキがかかり、さらに介護職員の人員配置基準で縛られる。
住宅型はこれらの規制や制約がなく、介護保険サービスは入居者と事業者との相対契約となるので、居宅サービスの組み立て方によっては、介護報酬収益が上げ易くなる。
過去、住宅型有料が囲い込み・貧困ビジネスなど悪質ホームの温床となった理由がこの積み上げ報酬にあったことを思うと、住宅型の急増が悪質ホームの再来と思ってしまうのは気のせいか。

このような背景を基に、住宅型が増え続けている中でも、近年緩和ケア(ホスピス)ホームの開設が目立っている。

主な緩和ケアホームの供給戸数

上述の事業メリットを享受するためか、緩和ケアホームの事業形態は住宅型有料をプラットホームとしているものが最も多い。緩和ケアホームの入居対象者は、癌末期患者や難病指定患者・精神疾患患者などが主な入居者だ。平均居住期間は癌末対応では2~3カ月間、難病や精神疾患では2~3年と他の住宅型と比べ極端に短い。
緩和ケアホームでは併設する訪問看護ステーションから医療保険対応の訪問介護サービスが提供されている。介護保険に基づく介護サービスを提供する有料老人ホームというより、病院からの退院患者受け入れ施設となっている。
この緩和ケアホームで、不要な訪問看護が横行し、不当な医療報酬を得ているケースが社会問題化してきた。共同通信市川編集委員の配信記事にはこの点が鋭く指摘されている。
住宅型急増の背景には、緩和ケアホームの急増が大きく関わっていて、これが新たな社会問題化している。次回以降この点を深堀していくつもりである。

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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