第17回 田村明孝の辛口コラム~緩和ケアホーム(ホスピスホーム)の過剰訪問看護

6月23日共同通信が以下のニュースを配信した。
「大阪の老人ホーム過剰訪問看護 会社否定、社員診療報酬目的」
の衝撃的な見出しで訪問看護の不正の実態に迫った記事だ。

この老人ホームとは、(株)ハーベストが事業主体の大阪市東淀川区にある住宅型有料老人ホーム「アプリシエイト東淀川」(居室数79戸・定員83人)、2022年6月現在の入居率は95%とほぼ満室状態だ。食費込みで126,500円と低廉な価格が入居率を高めているものと思われる。(当社調べ)
このグループ会社を率いるのは山田和英氏で、1986年西成地区で路上ホームレスを対象とした安価な宿泊施設を「サポーティブハウス」と称した簡易宿泊所を開設し、これが創業となる。
その後、大阪府・京都府・千葉県に住宅型有料老人ホーム9棟、サービス付き高齢者向け住宅3棟、合計総居室数747戸を開設し、その運営に携わる。
このほか、居住系入居者を対象とした居宅介護支援事業3か所・訪問介護5か所・福祉用具3か所・訪問看護3か所・通所介護1か所・薬局1か所の介護保険居宅サービスなどの運営を行っている。

記事によると、難病などの入居者に対して、グループ会社の「アプリシエイト訪問看護ステーション」から、必要性に関係なく過剰とみられる訪問看護を実施していたことが、現・元社員5人の証言で分かった。社員らは「診療報酬をなるべく多く受け取る目的だ」と証言している。「アプリシエイトグループ」は指摘の事実はないと否定している。
※記事の詳細はこちらをご覧ください。https://www.47news.jp/11099869.html

公益社団法人全国有料老人ホーム協会が令和6年3月に取りまとめた「いわゆるホスピスホームに関する基礎調査(WG部会報告)」では、以下のような報告がされている。(筆者は委員で参加)

一般在宅での訪問看護は、介護保険でも医療保険でも保険適用の回数・時間が定められているが、特に厚生労働大臣が定める疾病等(いわゆる別表7―末期の悪性腫瘍・筋ジストロフィー・パーキンソンなど20の疾病等)の患者の場合は、こうした制限を受けずに訪問看護を受給することが可能となる。
一般的な訪問看護の給付は、1日1回、かつ週3日以内だが別表7の患者では、1日複数回、週4日以上の利用が可能とされる。
財務省・財政制度審議会は、無制限の医療訪問看護利用に対し、利益率が高いことや訪問回数をコントロールできていないなどを理由に報酬の適正化が必要だとしている。

この数年、住宅型有料老人ホームに癌末期患者・パーキンソン患者・精神疾患患者などを入居させて、過剰な訪問看護を行っている緩和ケアホームが急増している。実態が把握しづらいことから表面だった事件とはなりづらい。不要な医療費が垂れ流し状態では、医療費はいくらあっても足りない。不正の摘発に乗り出す時期に来ている。

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1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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