第18回 田村明孝の辛口コラム~過剰訪問看護のファーストナースとサ高住供給No4のヴァティーの創業者は同一人物

5月8日共同通信の配信記事によると
武見敬三厚生労働相は5月8日の衆議院厚労委員会で、精神科の訪問看護事業者が診療報酬の過剰な請求を指摘されている問題を巡り、「(訪問は)患者の心身の状況を踏まえて決めるべきで、一律に上限回数とするような運用は適切ではない。必要に応じて事実確認を行う」と述べた。
問題が指摘されているのは、精神科の訪問看護事業で最大手とされる「ファーストナース」(東京)。同社は「あやめ」という名称で訪問看護ステーションを運営している。患者の状態に関係なく、可能な限り訪問回数を制度の上限である週3回にするよう全社的に看護師らに指示していたことが、共同通信の取材で分かった。

ファーストナースは北関東を拠点に急拡大
株式会社ファーストナースは、2010年設立。資本金1億円、代表者橋本真奈歩氏、Founder(創業者)松本智氏(実質的社長)、社名を変えた2017年ころから訪問看護事業所を急拡大している。
精神科に特化した訪問看護ステーション「あやめ」を栃木県・群馬県・埼玉県・茨城県など北関東を中心に展開、その後エリアを拡大し宮城県・福島県・新潟県・東京都・千葉県・神奈川県・山梨県・静岡県・長野県・岐阜県・愛知県・三重県・滋賀県まで17都県にまたがり244か所を開設している。他にサービス付き高齢者向け住宅(サ付き)「あやめの郷」6か所、デイサービス「あやめの郷」4か所、訪問介護事業所1か所がある。なぜか東京都内では青梅市の1か所しか開設されていない。

ファーストナースの事業所はヴァティーのサ付きエリアがベース
ファーストナースの創設者松本智氏は、それ以前の2002年に株式会社ヴァティーを開設している。ヴァティーは高齢者住宅とデイサービスの運営事業会社。
2011年高齢者住い法の改定により整備費補助などの優遇措置が講じられたサ付きの制度が開始され、「ふるさとホーム」「あんしんホーム」のブランド名で、デイサービスを併設して、いち早く参入した。開設エリアは北関東4県の他、福島県・千葉県・神奈川県・静岡県・山梨県・新潟県・岐阜県・愛知県の12県。サ付きは東京都には1か所も開設されていない。ファーストナースの事業所は、ヴァティーの開設場所とほぼ複する。
サ付きの月額費用は13万円から16万円と低額なため、入居率は9割程度と高い。
121か所4136戸は、サ付き供給ランキング全国4位と大手の一角を占めている。
それ以外にも高齢者住宅があり、介護付有料老人ホーム(介護付)が埼玉県に28か所、住宅型有料老人ホームを4か所運営し、有料老人ホームの供給ランキングは1529戸で全国40位と中堅クラス。
有料老人ホームの月額費用は16万円前後とこれも低額設定となっている。
埼玉県にのみ介護付が開設されているだが、埼玉県では当時、介護付しか認めていなかった。実はこれが功を奏し、介護付では過剰な訪問看護など医療の不正は行いづらく、不正に多少なりともブレーキがかかった。

過剰訪問看護のビジネスモデル
ファーストナースとサ付きなどの高齢者住宅の所在がほぼ重なることから、訪問看護+サ付きの高齢者住宅+デイサービスをビジネスモデルとして事業を急拡大してきた。
高齢者住宅の入居者を、医者と結託して精神疾患患者に仕立て上げ、制度の上限である週3回の訪問看護を必須ノルマとして売り上げを伸ばしてきたことが、現場の看護師の証言で明らかになっている。
ヴァティー関連の企業には、株式会社ケアメディカル「ケアガーデン」のブランドでサ付き26か所、株式会社デジタルヘルス「昭和の里」のブランドでサ付き6か所・介護付3か所などがある。
2016年、ヴァティーとケアメディカルは、投資会社の株式会社日本産業推進機構によって買収されたが、事業を仕切っているのは松本智氏であることに変わりはない。2017年以降訪問看護ステーションが急増することに、投資会社の存在が大きくかかわったことが窺える。

サ付き事業者5年間の供給戸数ランキング

*ヴァティーは2018年まで供給が急増したが、2019年以降は微増。2019年以降は、関連会社のデジタルヘルス・ファーストナースの事業主体名でサ付き15か所614戸を開設している。(このグラフには表示していない)

1974年中銀マンシオンに入社、分譲型高齢者ケア付きマンション「ライフケア」を3か所800戸の開発担当を経て退社。

1987年「タムラ企画」(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立し代表に就任。高齢者住宅開設コンサル500件以上。開設ホーム30棟超。高齢者住宅・介護保険居宅サービス・エリアデータをデータベース化し販売。「高齢者の豊かな生活空間開発に向けて」研究会主宰。アライアンス加盟企業と2030年の未来型高齢者住宅モデルプランを作成し発表。2021年には「自立支援委員会」発足。テレビ・ラジオ出演や書籍出版多数。

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