サービスなどの評価は難しい
「週刊ダイヤモンド」が過去3回にわたり有料老人ホームの評価ランキングの特集を行いましたが、いずれも販売部数が大幅に伸びたと聞いています。
評価内容そのものは必ずしも適切とはいえませんが、拠り所を求める人にとっては、得難い情報となります。
入居を検討している高齢者や、すでに入居している高齢者、またその家族は、良いホームと悪いホームの見分け方や、ホームを評価ポイントにもとづいてランキングした表などが欲しくなるのです。事業者も競合先の評価を知りたがりますし、評価が他社より上位にあると、それを広告のキャッチコピーに使用するホームも出る始末です。
公的な評価制度としては、地域密着型サービスの外部評価や高齢者福祉施設の第3者評価がありますが、いずれも読んでもよくわかりません。
介護サービス情報の公表制度が唯一の拠り所となりますが、介護保険サービスに限定しているために、住宅型有料老人ホームや新たに制度化されたサービス付き高齢者向け住宅(サ付き住宅)は公表制度の対象外です。
高齢者住宅の評価は、価格(入居金と月額費用)やハード(専有面積や共用設備・規模)は容易に比較できますが、日常生活サポート、食事、介護、看護、医療連携、看取りなどの専門職によるソフト面のサービスが加わると一転して評価が難しくなります。人それぞれの好みや相性といったものも、そこに絡んできます。
高齢者住宅は情報公表の義務化を
筆者は情報公表制度を使い、特定施設に入居したときの1ヵ月当たりの費用を算出しています。入居一時金を徴収しているホームでは、1年間入居しているとき、5年間入居しているときの1ヵ月間の費用は初期償却の程度や償却期間によって異なります。この数値に月額で支払う食費や管理費、上乗せ介護費を加算して算出しています。同一ブランドで3ヵ所以上運営している介護付有料老人ホームのなかで、日本で一番高額なホームは東急田園都市線の沿線を中心に事業展開している「ヒルデモア」です。5年間入居していたときの1ヵ月当たりの換算費用は77万円です。朝・昼・夕の3食と介護が付いて1日約2万5000円になります。一方、安いものは宮崎県にある「杜」というホームで、1ヵ月7万4000円、1日約2400円です。価格の高いホームと安いホームではおよそ10倍の価格の開きがあります。
介護付有料老人ホームは介護保険法上の特定施設ですので、介護職員の人員配置は3対1以上と決められています。
実際の人員配置割合を調べてみると、1.02対1の「シルバーシティ」から2.83対1の「明生苑」まで、配置にはおよそ2.8倍の開きがあります。有料老人ホームは2.5対1以上の手厚い介護職員体制をとっていれば、上乗せ介護費の徴収が認められていることもあり、2ブランドを除いた89のブランドが2.5対1以上の配置です。今や2対1以上が主流です。
5年間滞在した場合の1ヵ月当たりの費用を横軸に、介護職員の人員配置を縦軸にとった図(図 実質人員配置比率×5年間入居時の平均月額費用)を作成しました。右にいくほど高額で左にいくほど安くなります。上にいくほど介護職員が手厚く配置され下にいくほど薄くなります。
入居の相談にこられた方にこれで説明するとわかりやすいと好評ですし、事業者の多くが興味を示します。客観的な数値を表示しただけですが、評価とはこのような簡単な表をみるだけでもよいのではないでしょうか。
専有面積・入居率・退去率・入居者平均要介護度などをクロスさせると、さらに興味深い表ができますので、住宅型有料老人ホームとサ付き住宅の情報公表の義務化を進めるべきです。