第10回 高齢者居住安定確保計画の策定状況

供給目標値の考え方は都道府県ごとに異なる

高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)では、都道府県は高齢者の居住の安定確保に関する計画(以下、「確保計画」)を策定することができるとし、計画には高齢者に対する賃貸住宅および老人ホームの供給目標、その目標達成のための方針を定め、計画策定にあたっては住民の意見を反映し、市町村と協議したうえで確保計画を定め遅滞なく公表するとしている。

平成23年4月に高齢者住まい法が改正されて以降、公表された確保計画の策定状況は筆者の調べでは表のとおりである。

策定公表済みは26都道府県で、全都道府県の半数を超えた程度にとどまる。策定予定はあるが未だ公表していないのが10県、策定検討中が2県、策定予定なしが8県となっている。全国的に計画策定の意識は薄いといえる。このほかに政令指定都市では5市(川崎市・横浜市・相模原市・神戸市・熊本市)が策定公表し、6市が検討中である。中核市では船橋市のみが検討中でそれ以外は策定予定なし。計画策定義務を負わないとはいえ、地方自治体間の取り組み姿勢にばらつきがあり、住民も含めて確保計画に社会の関心は低い。

計画策定公表済みの26都道府県のうち平成26年度のサービス付き高齢者向け住宅(サ付住宅)の目標登録数を表示しているのは、首都圏の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、大阪府や愛知県などの都市部を中心に20都道府県にとどまる。このうち9道府県では、サ付住宅として登録されたものは、すでに目標登録数の8割を超え、5府県では26年度の目標登録数さえ超えてしまっている。

「現時点の登録数が目標数を超えていても開発規制するわけではないので問題はないと認識しており、目標値の見直し予定はない」(広島県)、「予想を上回るペースで登録が進んでいるととらえているが、現段階では計画の進捗状況のチェックや目標値の見直しを検討していない」(大阪府)、「目標値には現存する旧高齢者専用賃貸住宅・旧高齢者向け優良賃貸住宅などがサ付住宅のニーズ量であると仮定して算出した椎計値であり、民間による新規供給分は予想できないので見込んでいない。実際は目標値を超えると予想している」(島根県)など、目標値の設定の考え方がまちまちで、サ付き住宅の開設にあたっては各都道府県に問い合わせが必要となる。

 

劣悪な環境を増やさない確保計画に策定・公表を

東京都の確保計画は、介護保険事業支援計画で定めた介護保険3施設や特定施設・グループホームはその数値をそのまま表示している。それ以外には、低所得高齢者を対象とした小規模の(劣悪な)都市型軽費老人ホームを平成24年度までに2400室整備するとしている。

東京都では高齢者住まい法改正以前に中堅所得者を対象とした高齢者向けケア付き賃貸住宅(東京モデル1)の目標値を定めているが、それをサ付住宅の整備目標量としてそのまま表示している。平成26年度の目標値6000戸は、東京モデル1の基準に適合したサ付住宅のみの目標値となった。これには高額な有料老人ホームは含まれていない。

地方の特色を勘案してローカルルールの設定が認められているが、地方の独自性を尊重することが、劣悪な住空間の供給促進や、過剰な総量規制につながらないことを願っている。

トップへ
戻る