介護施設といえども住まいとみなすべき
介護施設や高齢者住宅の専用居室面積は、それぞれ最低面積基準が決められています。特別養護老人ホームの多床室(4人部屋)では、1人当たり10.65㎡、トイレ・洗面は共用です。この空間に介護ベッドが入り、その横にポータブルトイレが置かれます。持ち込み荷物は段ボール箱1つ分までと制限している特養ホームもあります。
入所者は、非人道的ともいえるカーテンで仕切ったこの空間で、平均で4年間を過ごし、亡くなっていきます。最近増えているユニット型個室は13.2㎡で洗面が付く程度の広さでしたが、多床室と比べて相対的に高い室料負担や建設コストの削減の観点から10.65㎡へと見直されています。
老人保健施設の4人床室では、1人当たり8㎡、介護療養病床では6.4㎡とさらに狭くなります。仕様はいずれも病院の相部屋です。平均滞在期間は老健施設で約9ヵ月、介護療養病床では約1年2ヵ月ですが、その間、この狭い空間で過ごします。
介護サービスを受けるために入所者が入る施設は、このように何とも貧しい空間なのです。
認知症対応型グループホームは7.43㎡と、4畳半の空間しかありません。下宿や間借りのような広さです。有料老人ホームの介護居室は個室で13㎡です。6畳間に押入れが付いた程度の空間ですから、水回りはせいぜい洗面が付く程度です。
ケアハウスはこれらより多少広くなって21.6㎡です。昨年度から登録制度が始まったサービス付き高齢者向け住宅は、これらと比べて最も広く25㎡です。キッチンやお風呂を共用で設備していれば居室面積は18㎡でも登録できます。
介護施設といえども入所者が9ヵ月間以上を過ごす空間は、もはや住まいの場とみなすべきでしょう。入所ではなく入居なのです。施設ではなく住居なのです。居室はプライバシーが守られる個室が当然ですし、暮らしを営むうえでトイレやお風呂、キッチン・洗面が必要となります。これらの水回り設備を備えると25㎡の居住空間が物理的に必要となります。国土交通省が「住生活基本計画」で、一人暮らしの者の住宅の最低居住面積を25㎡と定めているのはそのためです。
居室面積は25㎡を目標に
前回に引き続き、介護付有料老人ホームのブランドごとの居室面積を分析してみましょう。ホームには最も広い部屋から最も狭い部屋まで、部屋のタイプにはバリエーションがありますが、本データは最も部屋数の多いタイプの平均面積を使いました(相部屋の場合は1人当たり面積)。
平均居室面積の広いブランドをみると、「ゆうゆうの里」の28.6㎡、「みのり」(生協)の26.5㎡、「サンシティ」の25㎡の3つが25㎡超となっています。㈱メッセージの「アミーユレジデンス」・「Sアミーユ」がそれぞれ24.2㎡と続きます。「ヒルデモア」は22.6㎡、「敬老園」と「グランガーデン」は21.6㎡となっています。
一方、面積の狭いブランドは「シルバータウン」の9.1㎡、「しまナーシング」の10.7㎡、「ラ・テラス」の10.9㎡で、この広さは特養ホーム並みです。「グランシア」は13.2㎡、「ジョイライフ」は13.4㎡、「サニーライフ」・「フルールハピネス」は13.5㎡、「杜」は13.6㎡となっていて、有料老人ホームの基準ぎりぎりの13㎡台となっています。
居室面積が広くなるのに応じて価格が高くなり、広い居室をもつブランドは高額ホーム、狭い居室のブランドは安いホームが多くなります。
月々に要する費用をみると、広い空間を提供していながら月額21.3万円の「Sアミーユ」や、月額18.2万円の「アミーユレジデンス」といった㈱メッセージのブランドは、その点において割安感があります。逆に、月額24万円の「しまナーシング」、月額23.9万円の「グランシア」、月額22.8万円の「ジョイライフ」など狭い居室でありながら、㈱メッセージのブランドより高い価格となっています。
居室面積の平均は17.4㎡で、トイレ・洗面の設備が介護付有料老人ホームのスタンダードとなってきました。競争原理が働き、年々居室面積は広くなっています。居住空間の充実は、入居者の暮らしにゆとりをもたらします。施設も含めて25㎡を目標にしたいものです。