市区町村は、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの見込量を、中学校区程度を単位とした日常生活圏域を定めてニーズ調査を行い、きめ細かに介護サービスの見込量を決定し、それにもとづき介護保険料を算定して介護保険事業計画を取りまとめる。
都道府県は市区町村の定めた見込み量をベースとして複数の市区町村にまたがる保健圏域ごとの整備量を定め、介護保険事業支援計画を取りまとめる。
いずれも3年ごとに計画を策定し、今年は第5期計画(平成24(2012)年度~平成26(2014)年度)の1年目にあたる。
介護保険事業(支援)計画どおり、見込量に読み違いがなく、また計画値どおりに整備されていれば、サービスを必要とする要介護者に十分な介護サービスが提供されることとなり、サービスが足りないといった問題は発生しない。しかし、第3期計画(平成18(平成2006)年度~平成20(2008)年度)が始まった2006年度からは、介護保険財政の悪化もあり、ニーズ調査をしないまま見込量を意図的に抑えるケースが散見されている。
計画整備量が未達の状況も多くの都道府県でみられ、要介護者に十分な介護サービスが提供できない状況も現れた。まさにこの年は施設整備に対して総量規制が始まった年である。
施設・居住系サービスの状況に限ってみてみよう。支援計画で定めた整備量どおりに整備されているケースは少ない。弊社調べでは第3期と、第4期計画期間(平成21(2009)年度~平成23(2011)年度)の整備量は計画値を大きく下回っていることがわかった(表:都道府県の施設・居住系サービス計画量と整備量(全国集計))。
第3期介護保険事業支援計画では、介護保険3施設は特養ホーム(地域密着型サービス含む)1万5000人分、老健施設1万人分、療養病床1万2000人分が計画数に達していない。
居住系サービスでは、グループホームが2000人分超過、混合型特定施設はほぼ100%に達したが、介護専用型特定施設と地域密着型特定施設は1万3000人分が計画に達していない。第3期は施設・居住系サービスの合計で約4万8000人分が整備できなかった。
第4期でも未遂状況は続く。特漉ホーム4000人分、老健施設3万人分か未達成。グループホームは100%達成、特定施設は1万4000人分の未達成となり、第3期と同数の4万8000人分が未達成となった。
第5期には19万3000人分を整備する計画となっているが、第3期19万人、第4期21万人(介護基盤緊急整備含む)と増加した後、第5期は一転し、減少に転じている。特筆すべきは、特養ホームの整備が地域密着型特養ホームを含め8万3000人分と急増しているのに対し、民間の事業参入意欲が強く、ほぽ100%の整備を達成してきたグループホームや混合型特定施設は前期比で減少している点だ。
要介護者が年々増加している状況で第5期の19万3000人分という整備量では、過去の例からみても不足状態が続くと思う。
なぜなら第3期、第4期の6年間での未整備により、行き場がいまだ確保されていない要介護者もいるからだ。生活保護受給者や低所得者ほどその影響を受けやすく、介護難民をつくり出した原因がここにある。
未届有料老人ホーム「たまゆら」の火災事故では入居者10人が命を落とし、その後も老老介護や認認介護からの介護殺人や介護放棄、老人ホーム入居をめぐる詐欺事件など、施設・居住系サービスの整備の遅れを原因とする社会問題が露呈している。こうした実態の原因が介護保険事業(支援)計画の未達成にあることは明らかだ。