第8回 介護保険事業計画からみた施設・居住系サービスの整備状況 ~都道府県・政令指定都市を分析

都市部で整備量が増加するも依然として低い整備状況に

厚生労働省は平成26年度までに、施設および介護専用居住系サービスの過剰整備をコントロールする目的で、その利用者の割合を、要介護2以上の要介護認定者数全体の37%以下とする“参酌標準”を示してきたが、第5期介護保険事業計画(平成24~26年度)で撤廃された。しかし、第4期計画(平成21~23年度)終了時点で自治体の整備がどの程度進んでいるか、または遅れているかについての目安となるため調査した。

参酌標準である37%を大幅に上回っているのは西日本に多く、佐賀県で47.3%、石川県で46.5%、茨城県で44.9%、長崎県で44.6%、徳島県で44.0%となっている。特養ホームや老健施設の過剰整備が要因だ。

一方、整備が遅れている大阪府は28.1%、東京都は28.2%となり、30%にも達していない。京都府、千葉県、神奈川県、滋賀県が33%前後で続く。都市部の開設の遅れが目立っている。施設系サービスの整備が極端に遅れているうえにグループホームの開設も少なく、さらに特定施設の開設にもブレーキをかけて増やしていないことがその要因と思われる。

第5期介護保険事業計画での施設・居住系サービスの整備量をみてみよう。特養ホームは東京都で7513床、埼玉県で6852床、千葉県で6620床、神奈川県で5097床となり、首都圏の1都3県が整備量の多さで上位を独占している。

老健施設は東京都で5346床、埼玉県で2550床、千葉県で2394床となり、やはり首都圏が上位を占める。グループホームは東京都で2890室、大阪府で2309室、愛知県で1768室、北海道で1640室となり,全国に分散する傾向がみられる。混合型を含めた特定施設は東京都で1万1739戸、千葉県で6213戸、神奈川県で5825戸、大阪府で3142戸、兵庫県2944戸となり、都市部に集中している。

これら施設・居住系サービスを合計すると、東京都は2.7万人分を整備するとしている。以下、千葉県の1.6万人分、神奈川県の1.3万人分、埼玉県の1.2万人分、大阪府の1,1万人分と続くが、いずれも都市部で、今後急激に高齢化が進むエリアである。

参酌標準から除かれている混合型特定施設の整備数は東京都1万376戸、千葉県は5128戸、神奈川県は4034戸、大阪府は2910戸、埼玉県は2337戸となり、都市部では施設系サービスの大幅供給に期待できないことから、特定施設を増やさざるを得ない現状が垣間見られる。

東京都をはじめとした都市部での第5期介護保険事業計画期間の整備量は多いようにみえるが、第5期計画終了時点で、要介護2以上の要介護認定者数に対する施設・居住系サービスの割合は、大阪府で28,9%、東京都で29.4%にとどまり、依然として30%には達しない。神奈川県・滋賀県も33%台で推移する。

 

政令指定都市でも整備料不足の傾向

政令指定都市でみてみよう。第4期計画終了時の、要介護2以上の要介護者数に対する施設・居住系サービスの割合は、浜松市で47%、静岡市で38.8%、札幌市で38.5、新潟市で37.8%、仙台市で37.1%となり、この5市で37%を超えている。第5期計画終了時点では、浜松市は49.3%、静岡市は39.9%、新潟市は40.6%、仙台市は39.1%まで整備を進める計画となっている。

一方、堺市は25.4%、大阪市は28.2%となり、30%を割りこんでいる。横浜市は32.8%、岡山市は32.5%、名古屋市は32.9%、川崎市・千葉市・京都市・北九州市も33%台と低い。しかも第5期計画終了時点で堺市は26.3%、大阪市は28.5%にとどまり、依然として整備は進まない。

横浜市は第4期に混合型特定施設を含めて施設・居住系サービスを5133人分整備した実績があったが、第5期の整備量は2611分と半減し、27.1%まで落ち込むこととなる。特定施設は介護専用型の有料老人ホーム1200人分の整備を見込み、混合型特定施設の整備をOとしている点は、介護に特化した有料老人ホームを誘導しようとする横浜市の意図が感じられるが、絶対量の整備不足は否めない。

静岡市、浜松市を除いてはいずれも整備不足で、人口が集中する政令指定都市の抱える共通問題といえる。

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