1対1に近い職員体制
開設して6年が経過した「SOL星が丘」。映画会社が行う介護事業とは、どんなものか興味があり訪ねました。
東宝株式会社の子会社である「東宝不動産株式会社」が事業主体であり、運営は「東宝サポートライフ株式会社」が受託しています。
最寄駅の小田急線読売ランド前駅、京王相模原線京王稲田堤駅からはバス便になります。もともと映画のロケ地として東宝が利用していた土地で、区画整理事業後に遊休地となっていたものを活用し、6年前に介護付有料老人ホームとしてオープンしました。
本館と別館の2棟からなり、すべてユニットで設計し、1ユニット11室を8ユニット、全体で88の居室数で構成しています。ユニットごとに居間・食堂・一般浴室を設置し、特別浴槽は各フロアに設置しています。
現在は79人が利用しています。専用居室にはすべてトイレ・洗面が付いており、広さは20㎡です。
80歳の方の場合、入居一時金は1280万円で、20%の初期償却後の残額を4年で均等償却します。このほかに年間契約や月単位の契約も選択できます。月額費用は要支援・要介護者は24万1500円です。
介護職員の配置は1.5対1ですが、実際には1対1に近い配置となっておリ、介護に力を入れていることがうかがえます。入居者の平均年齢は90歳と高く、平均要介護度は本館で3.2、別館で2.2となり、ほかのホームと比較すると若干高めです。
ターミナルケアも充実
飲食業も営んでいる東宝不動産は食事サービスにこだわりがあります。ユニットごとに設置したキッチンで、ご飯を炊き味噌汁を作っています。食器は陶器や磁器を使い、従来の生活との継続性を保ち、家庭的な雰囲気を出すことを考えています。また、素材そのものを生かし、栄養素を逃がさず、嚥下障害の入居者にも食べやすい新調理システムを導入しています。
ホームに入るとまず目に入るのが、懐かしい映画ポスターや往年の女優の写真です。昔の映画全盛期の話題がレミニサンス(回想)療法に活用でき、映画鑑賞も定期的に行っています。東宝ならではの観劇やクラシックコンサート・オペラ・落語会・ジャズライブなど、入居者や家族の興味を引く企画を随時開催しています。
このホームの特色は、芸能面のカルチャーが充実するばかりではな<、介護の質が高いことです。在宅療養支援診療所の鷺沼診療所と連携し、入居者本人や家族の希望を取り入れて、6年間で13件の看取りを行ってきました。終末期となった際の意向を入居者に事前に確認しておき、状態の変化に応じてその都度、医師と話し合って対応しています。
以下は、90席代男性(要介護3)のターミナルケアのケースです。
この男性の妻が“老老介護”をしていましたが、自宅で転倒骨折し、自宅での生活が難しくなったことから、夫婦で入居しました。入居待の「終末期の意向調査」では、ホームでの看取りを希望していました。夫が終末期に入ったことを医師が確認した後、あらためて妻に看取りの意向を再度確認し、看取リケアを実施しました。
「食事は、おいしいものを食べさせたい」という妻の希望から、夫は糖尿病でしたが、「高血糖に注意しながらもカロリー制限はせず、おいしく、満足してもらえるような献立を考え、妻としての役割を充分果たせるようケアを組み立てました」と運営責任者の滝川房江さんは話します。
妻自身も介護を受けながら夫のそばに寄り添い、職員と一緒に看取り介護ができるという満足感や、妻としての役割を果たしているという充実感をもつことができ、夫は妻に見守られながら息を引き取リました。残された妻はいまもこのホームで暮らしています。
手厚い介護職員配置で、ターミナルケアが充実していることから、最近では末期がんの患者も受け入れています。
私のお勤めのホームの一つです。