第12回(最終回) 高齢者住宅の将来像

高齢者人口の6%分の住宅供給量の確保を

最終回となる今回は、2025(平成37)年に向けて高齢者住宅の有り様をデザインしてみましよう。

◆介護施設(特養ホーム・老健施設・介護療養病床)、居住系サービス(認知症グルーブホーム・有料老人ホーム)を住宅に改め、利用者は家賃を支払うシステムに統一し、「サービス付き高齢者向け住宅」(以下、「サ付き住宅」)並みの居住水準(専用居室25㎡・水回り設備・バリアフリー)を確保する。

◆介護保険で包括的に介護サービスを提供する特養ホーム・老健施設・グループホーム・特定施設を統合する。

◆入居する低所得者に対して家賃補助制度を創設する。

◆市町村はこれら高齢者住宅への入居判定を行う。入居判定に適った利用者のみが入居し、介護が受けられる。

◆入居判定は、要介護3以上・認知症・がん末期の看取りなど専門的・限定的なサービスを受けることを目的とする。

◆入居判定に該当しない高齢者は自宅で居宅介護を受ける。

◆2025年に向けて、高齢者住宅を、65歳以上人口に対して6%の供給量確保をめざす。

◆特養ホームやサ付き住宅の整備費補助は廃止し、開設に要する公的融資・利子補給・家賃補助に切り替える。

◆ハードを所有する「オーナー」と、介護サービスなどを提供する「オペレーター」を分離する。

厚生労働省は2009(平成21)年12月に、特養ホームの入所申込者が42万人いると発表しました。老健施設や療養病床などに入院・入所している要介護者も含まれていますので、すべてが実際に特養ホームに入所できなくて困っている高齢者ではありません。しかしなぜ特養ホームに大勢の入所希望が集中するのでしようか。

 

施設整備費補助金を廃止し家賃補助等の実践を

特養ホームは「施設」と位置づけられていますので、個室よりも4人部屋などの多床室が多く存在します。見知らぬ人と同室で、カーテンで仕切られた約10㎡の狭いスペースのベッドサイドにポータブルトイレを置き、平均で4年間という長期にわたリ入所して亡くなります。刑務所の方がまだましだという人もいるほど、劣悪な環境の特養ホームも存在するようです。本人の意思決定にもとづく入所はわずかです。

過酷な住空間は老健施設や、6年後に廃止される介護療養病床も同様です。平均入院・入所期間は老健施設が9ヵ月間、療養病床は1年2ヵ月間と特養ホームよりは短くなりますが、入院・入所者1人当たり面積は狭くなります。入院・入所する高齢者は要介護状態といえども、快適な空間で適切な介護サービスを受けたいと望みながらも、叶えられていないのが実情です。

グループホームの専用居室面積は7.43㎡(4畳半)、有料老人ホームは13㎡(6畳+押入れ)が最低の面積基準です。いずれも個室が基準ですが、この面積ではお風呂やキッチン、トイレや洗面などを居室内に設備できません。トイレヘの勤線を短くすることでトイレ誘導をしやすくなりますし、居室内でお茶の香りが漂えば穏やかな生活もおくることができます。

特養ホームヘの入所希望者が多いのは、施設などのサービスには、補足給付(所得に応じた食費や居住費の減免措置)という制度があり、所得の低い方や、将来の年金受給に不安を感じている方にとって、経済的負担が軽くなるためです。今後はこれら以外の居住系サービスにも、補足給付ないしは所得に応じた家賃軽減措置が必要です。また、施設を住まいとしてとらえ、居住空間を充実することが、当面の課題です。施設から住宅への転換が早急に求められます。

高齢者住宅への入居を検討するのは、比較的要介護度の軽い段階の75歳頃からです。団塊の世代がこの75歳に達するのが2025(平成37)年ですので、少なくともこの時期にあわせて高齢者住宅の整備をめざさなければなりません。めざすべき供給量は、要介護3以上の方の割合と同じ、高齢者人口に対して6%程度という割合が妥当でしょう。

特養ホーム・老健施設・グループホーム・サ付き住宅などは開設に向けた整備費補助金が制度化されています。これら補助金は事業者や建設関係者のメリットとなり、供給促進効果はありますが、利用者への還元がきわめて低いことから補助金は廃止すべきです。それを原資に利子補給や家賃補助に充てる新たな仕組みが必要です。

 

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