高齢者向けの賃貸住宅を一本化
今国会に提出されている「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(高齢者住まい法)の一部改正法案は、4月27日に成立しました。詳細については未定部分も多いのですが、現時点での改正のポイントを整理して、その課題について考えてみましよう。
国土交通省が管轄する「高齢者円滑入居賃貸住宅」(高円貨)と「高齢者専用賃貸住宅」(高専賃)と「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃)を廃止して、厚生労働省との共管による「サービス付き高齢者向け住宅」に一本化し、高専賃の登録制度をベースにして、高優賃のバリアフリー基準と整備費補助制度、シルバーハウジングの安否確認を混合した改正内容となっています。登録対象には賃貸住宅以外に利用権方式の有料老人ホームも含まれます。
登録は都道府県知事・政令市長・中核市長に行いますが、地方公共団体の「居住安定確保計画」に照らして計画数を超える場合には登録できないこともあります。地方公共団体の政策方針によっては、新たな総量規制となる可能性もあります。居住安定確保計画は、群馬県、大阪府、束京都、釧路町では策定していますが、未だ検討中の地方公共団体が多く、富山県と、政令市である京都市、大阪市、堺市では策定予定はないようです。
都道府県の指導監督権限を強化
サービス付き高齢者向け住宅の登録要件は、居室には、原則25㎡以上の専有面積、水回り設備と収納設備の設置、バリアフリー(手すりの設置・段差の解消・廊下幅の確保)の環境が求められます。提供するサービスは緊急通報と安否確認が必須で、日中はヘルパー2級程度の有資格者が常駐するので、シルバーハウジング並みの水準となります。
契約に開しては、①書面によること、②居住部分を明示すること、③長期入院を解約要件としない、④介護が必要だからといって事業者の判断で居室を移さない、という内容でなければ登録できません。敷金・家賃・サービス対価以外の更新料や権利金・開業費などの金銭は受領できなくなります。また、前払金に関して入居者保護の観点から、初期償却の制限・工事完了前の受領禁止・保全措置・返還ルールの明示が求められます。
平成20年9月に総務省は、高専賃の運営に対する都道府県の指導監督権限を強化するよう、行政評価・監視に基づく勧告を行いましたが、サービス付き高齢者向け住宅に対しては、都道府県が①報告聴取、②立ち入り検査、③業務に関する是正指示、④登録の取り消しを行うことになり、有料老人ホーム並みに厳しくなりました。
サービスを提供する高齢者住宅は、所有権方式の住宅を除いてすべてが有料老人ホ一ムに該当しますが、サービス付き高齢者向け住宅に登録した住宅は、有料老人ホームの届出が不要となります。万一、登録を取り消されたサービス付き高齢者向け住宅は、都道府県に有料老人ホームの届出を行うこととなり、その際、有料老人ホーム設置運営指導措針にもとづく行政指導を受けることになります。登録取り消しはそれなりの重い意味をもつことになりました。
サービス付き高齢者向け住宅の供給促進策として、建設改修費に対して建築費の1割か改修費の3分の1、1戸当たり100万円を限度に国が補助することになります。23年度予算は300億円を予定していますので、単純計算で3万戸の整備をめざしています。
そのほか、所得税や法人税の割増償却、固定資産税や不動産取得税の軽減措置、住宅金融支援機構の融資など供給促進の支援措置は驚くばかりです。
しかし、これらの補助対象から有料老人ホームは外れています。賃貸借契約のみが対象となり、利用権契約は対象外なので注意が必要です。
サービス付き高齢者向け住宅は、特別養護老人ホームや老人保健施設、介護付有料老人ホーム、認知症グループホームの供給が減るなかにあって、代替施設の役割を果たすことになりそうです。入居者の平均要介護度も2.5を下回ることはないでしょうから、やはり介護サービスは必須となります。